フレデリック・シャスラン
指揮
フレデリック・シャスランは現在サンタフェ・オペラの首席指揮者を務めている。2012年9月からは、イェルサレム交響楽団の音楽監督就任が決定した。
指揮者・ピアニスト・作曲家・作家として活躍するシャスランは1963年パリに生まれ、パリ国立高等音楽院とザルツブルク・モーツァルテウムで学ぶ。指揮者としてのキャリアは、ダニエル・バレンボイムのアシスタントとして、パリ管弦楽団(1987-89年)とバイロイト音楽祭(1988年『指輪』)においてスタート。1989-91年には、アンサンブル・アンテルコンタンポランにてピエール・ブーレーズのアシスタントを務める。
サンタフェ・オペラには2009年、ヴェルディ『椿姫』でデビュー。音楽監督の任期3年で、2010年10月から始まった。2011シーズンはグノー『ファウスト』でスタート予定。
主な国際音楽祭やオペラ劇場への客演は、ニューヨーク、ベルリン、ミュンヘン、ライプツィヒ、マドリード、バルセロナ、ローマ、ヴェネツィア、スコットランド、ウェールズなど世界各地にわたる。またパリの主なオーケストラをはじめ、ウィーン・フィル、ウィーン交響楽団、ハレ管弦楽団、ロンドン交響楽団、フィルハーモニア管弦楽団などに客演。
1991-94年ルーアン歌劇場の音楽監督を務め、1993年のブレゲンツ音楽祭において、国際的なデビューを果たす。同音楽祭では4シーズンにわたり、『ナブッコ』と『フィデリオ』において注目の演出家デイヴィッド・パウントニーとコラボレーションしている。1999-2002年にはイェルサレム交響楽団の首席指揮者を務め、1997年からはウィーン国立歌劇場のレジデント・コンダクターを務め、110以上のレパートリーを指揮。2005年にはマンハイム国立劇場の音楽総監督も務めた。2009年には新国立劇場にて『トスカ』を指揮し、2010年には『アンドレア・シェニエ』にて再客演。
2002年にはメトロポリタン・オペラ(MET)にデビュー。『イル・トロヴァトーレ』は大きな評判となり、その後の『ホフマン物語』、『シチリア島の夕べの祈り』、『セヴィリャの理髪師』、『ラ・ボエーム』などの公演を指揮している。ロスアンジェルス・オペラでは2005年、ローランド・ビリャソンとアンナ・ネトレプコがタイトルロールを務めた『ロメオとジュリエット』を指揮。2010年はウィーン国立歌劇場でニール・シコフが歌う『ユダヤの女』を指揮、またマチェラータ音楽祭でピエール・ルイジ・ピッツィ演出のグノー『ファウスト』を指揮。2011シーズンには再びウィーン国立歌劇場にて、ヨナス・カウフマンが歌う『ウェルテル』を指揮。
管弦楽曲やオペラも含め、バッハから近現代の作品に到るまで幅広いレパートリーを持つ。ハノーファーで『ニーベルングの指輪』全曲を指揮した際は、バイロイトでのバレンボイムとの共同作業経験が活きた。マンハイムでは『トリスタンとイゾルデ』や『タンホイザー』など他のワーグナー作品や、R.シュトラウスの主な作品を指揮。
ピアニストとしては、2001年にベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番『皇帝』」のソリストとしてウィーン・フィルと出演。またラヴェル「ピアノ協奏曲」では弾き振りを日本、イタリア、イスラエルなどで披露している。
新しいレパートリーの開拓や紹介に尽力しており、これまでに現代作品の世界初演は20以上に及んでいる。地震の新著『La Musique dans Tous les Sens』でもこの話題に触れており、近現代作品の側面を見つめること、作品の聴衆との関わりなどを記述。フランス語版とドイツ語版が出版され、英語版も近日発売予定となっている。
作曲家としては、管弦楽作品、映画音楽、そしてオペラを作曲している。代表作には、イェルサレム交響楽団で世界初演された管弦楽のための「シャガール組曲」や、映画『フィフス・エレメント』のための「Diva Dance」、そしてパウラ・ハイル・フィッシャーのリブレットによる歌劇『嵐が丘』がある。『嵐が丘』は抜粋したものをヴァレンシア交響楽団/ロンドン交響楽団合唱団とレコーディングしたほか、序曲・合唱組曲はオスロ、ボローニャ、イスラエルでも演奏されている。2010年6月にはマリンスキー歌劇場にて、ヴァレリー・ゲルギエフ指揮/ナタリー・デセイのソプラノによって『嵐が丘』より2つのアリアが演奏された。現在進行中の作品としては、ゴーティエの原作による『死霊の恋』を作曲している。